スピーカーの出力音圧レベル       2015年3月

スピーカーの出力音圧レベルについて説明しよう。
雑誌でプロのオーディオ評論家やネットでかなりのベテランがスピーカーの出力音圧レベルとアンプの出力の関係について誤解している例を見かける。

図の電気回路で説明する。
ご存知のように、電圧、電流と抵抗の関係はオームの法則で示される。
1オームの抵抗に1ボルトを加えると1アンペアが流れる。
電力は電圧と電流を乗じたもので、消費電力は1ワットになる。
1 (W) = 1 (V)×1 (A)
次に、この抵抗に10ボルトを加えると10アンペアが流れ、消費電力は100ワットになる。
100 (W) = 10 (V)×10 (A)
この比を対数を使ったdBで表すと、
電力利得 Gp = 10 log(100/1) = 20dB
電圧利得 Gv = 20 log(10/1) = 20dB
電流利得 Gi = 20 log(10/1) = 20dB
電圧と電流が10倍になると電力は100倍になるが、dBを使うと、どの利得でも等しいdB量になるのがここでの結論だ。

スピーカーに加えた電気振動は機械振動から空気を震わせる音響振動へと3段階に変化する。最終の音響の場合は出力音圧レベルを用い、単位はdB/W/mだったが、最近はdB/2.83V/mが使われるようだ。
公称インピーダンスが8オームのスピーカーに2.83Vを加えると
  P = V ×I = 2.83 (V) × 2.83 (V) / 8 (Ω) = 1 (W) になり、従来の単位と同じだ。
公称インピーダンスが4オームのスピーカーに同じ電圧を加えると電流が2倍流れ、電力も2倍になる。8オームのスピーカーと比べて出力音圧レベルが3dB大きくなり、見かけの能率が良くなるので注意が必要だ。
また、6オームの場合は1.25dB大きくなる。
音の強さ(出力)は電力に相当し、また音圧は電圧に相当する。これに振動板の移動距離を乗じたものが空気排出量、音響エネルギーになる。
スピーカーの音圧差が6dBの場合、比は2倍だが、アンプの出力は2×2の4倍が必要だ。



出力音圧レベル
(dB/W/m)
能率
(%)
増幅器出力
(W)
110 64 1.6
107 32 3.1
104 16 6.3
101 8 12.5
98 4 25
95 2 50
92 1 100
89 1/2 200
86 1/4 400
83 1/8 800
80 1/16 1600
もう一つの例を示す。
出力音圧レベル92dBのスピーカーの能率は1%だ。
これは100Wを加えると99Wが熱になり、残りの1Wが音響出力になる。10dB低い82dBのスピーカーだと0.1%の能率で99.9Wが熱になる。

出力音圧レベルが3dB増える毎に能率は2の倍数で増加し、逆に3dB減る毎に1/2倍、1/4倍と半分になる。

92dBのスピーカーに100Wを加えると音圧は20dB上昇し、1m離れた位置でオーケストラのフルレベル112dBを出力できる。これと同じ音量を出すために、昔のJBL130Aウーファは101dBなので12.5Wで足り、また、ホ−ン型の中高音ユニットは105dB以上あるので数Wのアンプでこと足りる。

最近の高級スピーカーは90dB以下のものが多く、エネルギー・トランスデューサーとしての重要な性能の一つである能率を犠牲にしているので、数百Wのアンプが平気で必要になる。

また、スピーカー・ボックスを振動させないためにティア・ドロップなど流麗な曲線のトールボーイ型が増えている。確かにボックスは振動しないが、その振動エネルギーがどこかに消えた訳ではなく、すべては可動部、すなわち、一番弱い振動板に向かう。そこで、その反作用に対抗すべく、振動板は金属や炭素繊維を用い、ますます重く動きにくく、止まりにくくなる。そうして反応が鈍くなる。
これらの製品には、『ボックスを振動させないのが目標ですか』と問いただしたくなる。

『過ぎたるはなお及ばざるが如し』
ひとつ前に戻る     ホームへ
inserted by FC2 system